山道を進んだ先に、その工房はある。外に出ると、目の前には静かに広がる美しい景色が広がっていた。

独立を機に工房を探し、この場所に出会ったという。以前ここで陶芸をしていた方の薪窯が、そのまま残されている。
二人は陶芸教室で出会い、現在は夫婦で作品づくりを行っている。活動を始めて、今年で12年目を迎える。
土と釉薬は二人で同じものを使う。一伯さんは轆轤(ろくろ)、亜紗子さんは「タタラ技法」と呼ばれる、粘土を板状にして成形する技法で制作している。

くるり窯の作品には、「印花(いんか)」と呼ばれる、模様を押す装飾技法が施されている。好きな民藝や古い布から着想を得てオリジナルのスタンプを作り、シンプルな柄を組み合わせながら、一つの模様を形にしていく。
「忘れているくらいが、ちょうどいいんです」
そのままを真似るのではなく、探りながら、あくまでも独自の模様を生み出していく。


スタンプを使う技法としては「三島手(みしまで)」がよく知られているが、くるり窯では工程の順序が異なる。通常は成形後にスタンプを押すが、その前に「化粧」と呼ばれる工程(成形した粘土の表面に別の色の土を塗る技法)を挟んでいる。
「試行錯誤を重ねる中で、土の深みを出したくて、少し変えてみたんです」
模様は釉薬の中にやわらかく溶け込むように現れ、くるり窯ならではの表情を生み出している。

色、形、模様。そのどこかに、民藝ややちむん、安南焼といった、これまで惹かれてきたものの気配が感じられる。
手間はかかる。それでも、そのひと手間が、印象に残る作品を生みだしている。

